[本] エッセイ | Paradise City

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    「こころの傷を読み解くための800冊の本」

    こころの傷を読み解くための800冊の本

    こころの傷を読み解くための800冊の本 総解説
    赤木 かん子 編著

    久しぶりに読み応えのある本を読みたいのだけれど、何かないだろうか と思いながら図書館でふらふらしているときに見つけた一冊がこれ。ちょっとタイトルに引いてしまいそうになりますが、内容は等身大で非常に読みやすいものです。
    「AC(アダルトチルドレン)」を中心軸として「アイデンティティ」「依存」「共依存」「虐待」「癒し」それぞれのカテゴリに沿った視点で読み解くブックガイドなのですが、ひとつひとつの書評が約400字くらいで、扱っている本は漫画あり児童書あり大人向けありで縦横無尽。難解なガクジュツ的書物は皆無です。
    何より赤木さんを始めとする書き手の視点がとてもいい。

    漫画では特に萩尾望都作品と山岸涼子作品が頻出しています。
    “エイジズム”で大友克洋の「童夢」を取り上げ、“フェミニズム”で「内田春菊の悪女な奥さん」、“アルコール”で中島らもの「今夜、すべてのバーで」“ACとは何か”で三原順の「はみだしっ子」を取り上げる・・・。このラインナップはほんの一例ですが、興味深いでしょ?(笑)
    様々な心的外傷という切り口から書かれたブックレビューなのに、重くはなく押し付けがましいところもなく、その事実はいつも日常のそこここに在るのだよ と提示してくれます。

    横着な私などはこれを読んだだけで何とはなしに満足してしまいそうになるのですが、そこは赤木かん子氏も心得たもの。
    ・・・この本だけを読んでもおもしろく感じてもらえるようには作ったつもりですが、原著、紹介した本のほうが何倍もおもしろく魅力的なのはいうまでもありません。
    どうぞ、紹介した本、そのもののほうもお読みくださいますよう・・・・・・。

    前書きで釘を刺されてしまい思わず笑ってしまいました。

    へえ こんな物語があるのか・・・と初めて知った絵本や児童書があったので、今度読んでみようと思います。
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      のんのんばあとオレ

      のんのんばあとオレ
      のんのんばあとオレ
      水木 しげる


      一昨年の夏、義祖母の法要で、米子に住む叔父のところに出かける機会があったので、かねてから行ってみたかった境港に出かけたことがあります。
      どうして境港に行ってみたかったかというと、そう!水木しげる記念館があるからです!(笑)そんな機会でもなければ、なかなか行けない場所ですからね〜。

      JR境港駅前から水木しげる記念館に向かう「水木しげるロード」は妖怪のモニュメントがあちこちに設置され町全体がまるでテーマ・パークの趣。

       目玉親父の街灯


      街灯はこんなん↑だし、通りにはこんな調子で↓モニュメントが設置されているのですから。

       子泣き爺


      これは水木しげる記念館前にある「目玉親父」↓
       目玉親父


      こんな風に、今ではすっかり境港を代表する「名士」になってしまわれた水木しげる氏ですが、こどもの頃は勉強嫌いの腕白坊主だったのですねえ〜

      少年時代の思い出がエッセイとして綴られる本書「のんのんばあとオレ」は飾らない氏のお人柄がよく表れています。

      様々な人間模様が語られるなかでも、やはり「のんのんばあ」との場面には惹き込まれます。
      家を出てすこし歩くと、カモメもいないのにやたらとカモメのような声がする。オレがきょろきょろしていると、のんのんばあは、あれは「川赤子」だというのだ。川赤子はあちらだとおもうとこちら、こちらだとおもうとあちらというように声が聞こえる、すがたを見たものはない、とのんのんばあはまじめな顔で説明した。
      そういわれるとカモメよりネコの声に似ていて、たしかに「川赤子」だとおもえてくる。のんのんばあは笑いもせずにまじめな顔でいうから、疑う気はミジンも起きない。お化けはいるのだ、しかもそこらじゅうにいるのだ、という気持になってくるのだ。
      そのうちに、だんだん日がかたむいてきた。どこかでゴーンと鐘がなった。

      読んでいると、自分もまるで田舎の砂利道をのんのんばあと一緒に歩いているかのような気分になってきます。
      私の生まれ育った故郷も竹藪や林が多く、藪に踏み分け入れば柵も無い溜池や蜜柑山の点在する地域でした。
      晴れているのに雨が降っている「狐の嫁入り」の話などは、子供の頃に小母さんが話してくれた様子とよく似ています。だから「のんのんばあは笑いもせずにまじめな顔でいうから」という雰囲気が何となく分かる気がするのですよね。
      戦前は美徳だった「信心深い」という心は、戦後、効率化が求められて経済優先になるにつけ「うさんくさいもの」になり下がってしまった感があるのですが、同時に、見えないものを見る力は明らかに低下している感じがします。

      でも本当はみんな、妖怪を見たい気持ちがあるんじゃないかな。
      そうでないと、町ぐるみであんな立派な妖怪ロードを作ったりはしないと思うのです。
      妖怪を見ながら歩いていると、異世界散歩をしているようで楽しいんですよ。水木しげる記念館の前に一番堂々と立つのは「のんのんばあと幼い頃の水木しげる像」です。
      のんのんばあ

      代表作である「鬼太郎」より目立つポジションにのんのんばあが居るところが、いいセンスしてますよね(笑)
      水木氏の「原点」ここにあり というのがさりげなく主張されている気がしました。
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