Singles 1990-1993 ザ・ブルーハーツ
後期ブルーハーツのシングルを、カップリング曲も含め全て収録したアルバム。
不思議に、「よく耳にするのだけれど、まとめてじっくり聴く機会があまりなかった」というバンドがあって、私にとってはブルーハーツがそれだったりします。
今となっては伝説的存在のこのバンドを、私のようなハンパな奴が今更何を語れることがありましょうか・・・と内心で思いながらこうして書いてしまうわけですが。
いいですね このシングルコレクション。
ライナーノーツに評論家のレビューが載っていないのがイイ(爆)
彼らが現役で活動していた頃、ブルーハーツの印象は「とんがっているバンド」。
その頃は、パンク色の強い彼らの曲を聴いても「悪くないな」と思う程度で、正直それほど琴線が響かなかったんですが、いま改めて聴いてみて印象が随分変わりました。
何と言うか・・・優しげな曲や歌詞を「売り」にしているポップ・シンガーよりも、ずっと優しく温かいと思う。
この秘められた優しさに気付くまでに私は何年かかっているのか(遅いよ・汗)
だけど同じ曲でもひとそれぞれ聴く時期によって、曲の受け止め方は変わっていくものですよね。
誰の上にも雨は降るけど
時々そしらぬ顔をして
チャンスも降ってくる
「チャンス」
車輪の下で苦しむより
長い靴下を履いてる
ピッピと遊びに行きたいな
ほら男爵も誘おうか?
「俺は俺の死を死にたい」
どの曲も、言葉で直接は言わないけれど、スケールの大きな優しさがあります。
ヘッセよりリンドグレーンだよと、長靴下のピッピを持ってくるあたり、実は文学少年だったんですねぇ(笑)
システムの車輪に踏み潰されるな、窮屈なシステムから飛び出してやろうぜあのピッピみたいにさ・・・重いテーマを扱いながらも重苦しくならない見事な暗喩。
男の人でピッピを楽しめるひとは素敵です。何せ「世界一強い女の子」のピッピですからね。
余談ですが、ああいう破天荒な物語を楽しめる子供は、年々減っているらしいです。分別を覚えてしまうと「こんなことあるわけないじゃん」と冷めた目で読んでしまうらしい。
でも、冷めきらない眼で世の中を眺めることの出来るスタンスを持ち続けていないとアーティストにはなれないと思う。
歌詞カードには曲それぞれのヒットチャート順位がデータとして添えられていますが、例えば。
「1000のバイオリン」初登場47位 最高位47位 チャートイン2週連続
「夢」初登場28位 最高位14位 チャートイン15週連続
「TOO MUCH PAIN」初登場29位 最高位29位 チャートイン3週連続
「夕暮れ」初登場71位 最高位71位 チャートイン1週
1位になったのは、このアルバムの中では唯一「情熱の薔薇」のみです。
意外に、その当時のチャートでは低かったんだな というのが、数字で分かるようになっているのですが、「名曲」として後世に残る曲が必ずしもヒットした曲とは限らないという逆説を証明しているようにこのデータから感じました。
データを添えたのは、わざわざそこに気が付かせるためだったのかも。