うちの息子(現中1)は小5の秋まで少年サッカーをやっていたのですが、コーチが余り技術や戦術を教えない人だったためか、公式戦では毎度「勝てないチーム」でした。
他のチームは、もっと具体的な攻めや守りの「形」を練習しているのに、どうしてうちのコーチはゲームでの基本的な動きを教えないんだろう・・・と思ったこと、何度もありましたね。
そのコーチの言い分はこう。
「子供達に自由な発想でサッカーを楽しんでもらいたい。大人の押し付けで戦術を仕込んだら勝てるかもしれないが、それは自主性を妨げる」
これは一見すると非常にもっともらしい台詞なのですが、基礎力がしっかり身についていない子供が「自由な発想」で何ができるのかというと、何ともアヤシイものです。
実際に「まとまりのあるチームプレイ」には程遠いものだったしね。
いくら綺麗事を言おうが、結局のところ勝負事は勝ってナンボ。負けて楽しいはずないんです。試合で勝てないと、面白くなんかないよ。
「負けたけど、精一杯やったから悔いは無い」なんて言葉は、熾烈な戦いの末に勝った晴れやかさを味わったことがあるとか、本当に悔いの無い努力をしたと胸を張れる経験を持っているとかいう人が言ってこそ、その言葉に真実味があるんだよね。
子供達は負けることに慣れてしまうと、強いチームが相手のときには「どうせまた負けるんだろうな」という気持ちになってしまう。
負け慣れした子供の顔に充実感などありません。
親としてもいい加減「・・・これでサッカーの楽しさが分かるんだろうか?」という疑問も湧いてきてしまう。
小学1年生の頃からサッカーをやっていた息子ですが、残念な事に「本当のサッカーの楽しさ」というのは分からないままだったと思います。
(まあ、これは本人の資質もあるし、向き不向きがあるので一概にコーチに責任があるとは思いません。今はバスケに熱中しているので、それはそれで良かったかなとも思う。)
少年サッカーと日本代表を並列に比べるのは誠に失礼な話なので、ジーコJAPANの「自由なサッカー」論を聞くにつれ上のコーチの例をつい思い出していたものの「レベルも違うし、そんなまさか」と思っていたのですが。
でもW杯だと日本代表は世界レベルのなかに混じると「大人と子供」じゃないか・・・と思ってしまったんですよね今回。
「日本人は自分たちがトップの仲間だと勘違いしている。できるサッカーと、やろうとしているサッカーのギャップがありすぎる」。
地元開催だった02年日韓大会で16強入りしただけで、安易にさらなる躍進を望むことは間違いであると指摘。さらに、圧倒的な個人レベルの高さがなければ成し得ない、自由な発想のサッカーを求めたジーコ監督の方向性にも疑問を投げかけた。
日本には日本に適したサッカーがある。それがオシム監督の考えだ
「できるサッカーと、やろうとしているサッカーのギャップ」
日本代表の問題を端的に指摘したオシム監督の言葉は、真摯に受け止めて次に進まないと前途が暗いかも。
私は個人的に、Jリーグ発足直後から鹿島アントラーズのサッカーが好きだったので、日本代表監督になってからもジーコの理念は支持していたのですが、オシムの指摘は客観的な事実を突いてると思います。
少年サッカーに関わった経験上、ほんのちょっとだけ草の根レベルの世界を見知っていますが、そちら方面に関しても、コーチや監督・指導者陣の意識改革が大事なんじゃないかな と思うことは多々あり。
ボランティアで成り立っている少年団では試合の審判も、親やコーチがやるのですが練習試合などでは自分のチームのコーチングをしながら主審をするひとも居ます。同じピッチで対等に試合しているはずなのにポジショニングの指導を「主審」がやるってどうよ?(爆)これには子供達も「あんなのズルいよ!」と腹を立てていました。
うちのチームから出す審判は決してそういうことはしませんでしたが・・・。
また、コーチ陣も縦の繋がりや浮世の義理があり、中学・高校時代の先輩後輩の間柄だったりすると、お互い言いたいことが言えなかったりするんですよね。
そういえば練習を休んだことのない我が家の息子が試合ではベンチに居て、練習を平気で何ヶ月も休む少年が不意に試合にやってきて先発 なんて理不尽なこともありましたな。実力的な差は殆ど無いようなメンバーのなかで、何でそういうサボりがちな子供がいきなりスタメンなのか不思議に思っていたら、その子の親はスポーツで有名な私立校の関係者でした。
そういうコネみたいなもの、子供の運動部にも厳然とあるんだよね。大人より子供の方がお互いの実力差が小さい分、こういう贔屓をしやすいっていう部分もある。
それでも、こどもの保護者がコーチに進言するっていうのは、更にご法度だし。トレセンに誰を送るかを決めるのも少年団の指導者陣ですからね。ひどい場合には「そんなこと言ってたらトレセンに推薦しませんよ」と脅す人も居ます。内申書を盾に脅す教師みたいだけど、こういうのはどこにでもある話なんだ。
すごく小っちゃいことを書いてる気もしますが、もっともっと裾野から改革していかないと底上げされない気がします。
izumatsuさんが
バスケットもサッカーもそうだけど、超一流の選手と日本のプロとの違いは、「強さ」と「速さ」だと思う。それは肉体の差もあるけれど、大きいのは裾野の広がりじゃないかしらん。
と書かれているのに同感。
日本では「和」が尊ばれるから、アクの強い奴はハジかれてしまう。
特にFWは優等生タイプより、がむしゃらなタイプが日本には必要だと思うし、マスコミも世間も「アルゼンチン代表に居るような圧倒的強さ」を持ったFWを待望しているようではありますが、これは自分達がやっている教育と矛盾してます。
日本の社会は「がむしゃらで気の強い子」なんて、ホントは嫌いでしょ?今のシステムじゃ絶対にそういう破天荒なタイプは育ってこないでしょう。
芽だけはがんがん摘んでおいて、結果だけ理想的なものを求めたってそんなの叶うわけがないのです。
次世代の選手を育てる人が時代錯誤な感覚のままでは世界に通用する選手なんてそうそう現れないだろうなあ・・・。
これは良い指導者が増えることを祈るほかないですね。(現時点で良い指導者も確かに居るのですが、その数が少ないんでしょう)
監督が変わったからといって、色々な問題が劇的に改善されるなんてこともまずないでしょう。オシムもそれを承知のうえで監督を引き受けるに当たり、「地元開催だった02年日韓大会で16強入りしただけで、安易にさらなる躍進を望むことは間違いである」と最初に釘を刺したんじゃないでしょうか。
少しずつこのエントリを書いていたら中田選手の引退が報道されました。
驚きましたが、彼らしい引き際ですね。
もう日本代表としての中田選手が観れないのは残念でなりませんが、今まで本当にお疲れ様でした!