「ライフ」 すえのぶけいこ | Paradise City

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「ライフ」 すえのぶけいこ


ライフ
すえのぶけいこ 

気が優しくてお人よしなごく普通の女の子「歩」は中学3年生。
そんな歩にもしっかりしていて頭のいい友人ができ、ただただ「彼女が憧れている高校に一緒に行きたい」という無邪気な一念で頑張り、同じ高校を受験する。
合格結果は友人が不合格、自分は合格というまさかの結果だった。その直後、親友だと思っていた少女から「何であんたなのよ!?」という激しい憎悪の言葉を浴びせられる。
憧れの高校に入学するも、そのトラウマから周囲に馴染めずにいる歩。
歩が自己嫌悪真っ最中なとき、何故か明るく近寄ってきた「マナミ」。
それが凄惨な物語の始まりだった・・・

絵柄はとっても少女漫画で可愛らしいのですが、内容は絵柄とは裏腹。
恐ろしいほどのリアルさで「いじめ」が描かれる少女漫画界の異色作です。
裏切りと悪意と謀略のなかで翻弄され、心身ともに傷ついていく歩。
あまりに凄惨なのでところどころ目を背けたくなるような場面も。
「まさか、こんな酷い奴って普通居ないよねえ・・・」と呟くと、長女は「わかんないよ?だって“こんなこと有り得ない”って事件が実際起こってるじゃん」という返事が。
うーん この娘が言うとさりげなく重い。
いじめのターゲットにされた少女という点で、以前の自分とやや重なる部分があるのでしょう。最近はあまり漫画を読まなくなった娘ですが、この作品だけは発売されると自主的に買ってきます。
うちの場合は家族ぐるみで学校と相手の親を相手に回し、早々に学校から撤退したので事なきを得ましたが、もし気付いてやらなかったらどうなっていたことかと思うと恐ろしい。その当時の長女は「南条あやの保護室」や自殺サイトによく出入りしていましたので、傍から見るとかなり危険な状態だったかもしれません。

自殺者の心理を研究していた大原健士郎さんの「おれたちは家族」という著書の中に
自殺者が、自殺を思い立ったと同時に自殺する事はまずありません。自殺は突発的に起こるものではありません。その前段階に必ず心の病気があり、その人は悩んでいるのです。 (中略)
自殺者はありとあらゆる手段を弄して、周囲の人々の助けを待っているのです。「死にたい 死にたい」というのはとりもなおさず、「助けて欲しい、助けて欲しい」といっているにほかならないのです。

という箇所があります。
氏のエッセイは自己の研究テーマである自殺者の心理のみならず、常に「生きること」と「死ぬこと」をテーマにしておられるのですが、眼差しがとても温かいのでテーマの重さに関わらず、生きるエネルギーを分けて貰えるような感じがします。

「ライフ」にもいじめを苦に自殺未遂を起こす少女が居ます(主人公ではなく)。
飛び降り自殺の際に足から落下したお陰で骨折だけで済むのですが、当のいじめっ子である本人がお見舞いに訪れます。勿論、謝罪したり反省する様子はさらさらありません。
病院の窓から突き落とす素振りを見せ、「今度はちゃんと頭から落ちなさいね!」と怖がる少女を追い詰めます。

ここまで卑劣な人間の存在を描くこの作品は、本当に怖い。
でもこれは漫画の誇張ではなくある面で鋭いところを突いていると思う。結局、悪質ないじめをするクズというのは、どんなことがあろうと反省する心など最初から持ち合わせていないということなんだよね。だからこそ、そんな人間のために死んではいけない。
いじめに対する学校側の対処ぶりもリアルです。学校というところが如何に保身に走ろうとするか揉み消しにかかろうとするかも描かれます。
心理描写シーンが多いので、ストーリーはスピーディーではありませんが・・・。
でも自殺を考えるほど悩んでいる子供たちにはこの「ライフ」を是非読んで欲しいと思うのです。同じすえのぶ作品の「ビタミン」でもいい。
絶望のなかにもきっといつか光はあるということ、どんなときでも自分の足で立ち上がる力は残っていること、きっと自分を支えてくれる人が傍に現れる日が来ること・・・そんなことをちょっとだけ信じてみようかと思うはず。
どんなにいまが苦しくても、卑劣な人間のために自分の人生を棒に振っては何もかも台無しになってしまう。月並みなことしか言えないけれど、余りの辛さに死を夢想することは誰にでもある。それでも自分の幸せな時間がいつか訪れることを信じて、助けが必要なときは精一杯SOSを発信してみてほしい。明日を待ってみようという勇気を持って、生きていって欲しいです。
ライフは現在13巻まで発売中でまだ連載中ですが、本当の意味で歩が苦難から解放される日がくるのか、いじめる側の歪んだ心理にも言及されるのか、またそちら側にも罰や救いが訪れるのか、気になるところです。
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